Smiley face
写真・図版
水木瑠雅選手=2025年8月4日午前11時32分、兵庫県尼崎市、小田邦彦撮影

 夏の甲子園に4年ぶり3回目の出場を果たした弘前学院聖愛。ベンチ入り選手20人の中で、青森大会で1試合も出場できなかった選手がいる。背番号20の外野手・水木瑠雅選手(3年)。聖地で悔しさを晴らすため、関西入り後の練習には熱が入っている。

 青森大会5試合で出場がなかったのは、水木瑠選手と田崎光太郎主将(2年)の2人。田崎主将は右ひざのケガを抱えているため、プレーができるのに試合に出られなかったのは水木瑠選手だけだった。

 そのことを尋ねると、大きな瞳を潤ませながら答えてくれた。

 「結構、腐っていた部分はあって。勝っても、自分は何もしていないし『俺、なんでベンチにいるの?』って思っていました」

 チームが勝ち進んでも、素直に喜べなかった。

 自宅に帰ると、家族の前で弱音を吐いた。「俺、必要ないのかな」。涙がぼろぼろとこぼれた。

 家族からは「何もしていないことはない」と慰められた後、こう諭された。「腐っていたら、ベンチに入れない3年生に失礼。チームのためにできる役割はある」

 その言葉に、「チームのピンチにベンチから盛り上げるのが役割だと思いました」。水木瑠選手は笑顔が持ち味。そこから、チームの勝利を素直に喜べるようになった。

 反省もあった。「すぐに出場できる準備ができていたのだろうかと思いました」。甲子園ではいつでもグラウンドに出られるよう準備をより入念にするつもりだ。「のりさん(原田一範監督)に『いつでも行けます』とアピールしたいです」

 組み合わせ抽選会があった3日の午前、自由行動の時間に大阪市にあるビリケン神社に行った。大阪で有名な幸運の神様ビリケンに「チームが勝てますように」という願いに加え、こう祈った。「ヒーローになれますように」。願いをかなえる舞台は、憧れの甲子園だ。

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