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八戸工大一の田口壱大主将=2025年7月20日午後4時6分、県営、小田邦彦撮影

 (20日、第107回全国高校野球選手権青森大会準々決勝 弘前学院聖愛3―2八戸工大一)

 しびれる場面で回ってきた。1点を追う九回2死一塁、この日3安打の八戸工大一・田口壱大主将(3年)が打席に立った。「自分で決めて勝ちたい」。狙い通りの直球をたたいたが遊ゴロに終わり、天を仰いだ。

 「自らに妥協しない、素晴らしいキャプテン」と長谷川菊雄監督に評される。チームを締めるために、嫌われ役になってもいいから厳しいことを言った。一方で、優しい口調で諭し、輪も保った。そんな田口主将はこの日、打席に入る時、出塁した時、仲間に話しかける時、白い歯をこぼしていた。「笑顔をつくったんじゃなく、楽しかったんです」。自然と笑みが出た。

 高校入学前は挫折を味わった。中学は青森山田中に通っていたが、レベルの高い選手の中で活躍する機会に恵まれなかった。途中で八戸市の中学に転校した。

 八戸工大一で力を伸ばし、県内屈指の捕手に成長した。ただ、それは自らの力だけとは思わない。「いい仲間に出会えて、支えてもらった。その中で主将をさせてもらって幸せだった」

 勝てば、進学する可能性もあった青森山田高との対戦だった。「悔いはある」と言いながら、こう続けた。「チームが一つになってやれて、うれしかった」。目は涙で潤んでいたが、最後まで笑顔だった。

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