島根県内で大量に出土している青銅器の研究の国際拠点をつくろうと、島根大学法文学部と日鉄テクノロジー(東京)が連携研究協定を結んだ。同社が持つ化学分析のノウハウを考古学に生かし、日本列島の弥生・古墳時代の青銅器生産の実態究明を目指す。
協定は9月に締結。浅田健太朗・法文学部長や江藤学・日鉄テクノロジー常務執行役員らが今月6日、松江市の島根大で会見を開いて発表した。
協定では、日鉄テクノロジーが、青銅を構成する銅やスズ、鉛といった含有量の多い元素だけでなく、微量なものも含めて成分分析。さらに、鉛の同位体を分析することで、日本、朝鮮半島、華南(中国南部)、華北(同北部)といった産地を推定し、考古学の知見と合わせて、青銅器の原料の入手、製作、流通、保有、消費の過程を調査するとしている。
島根大考古学研究室の岩本崇・准教授は「これまで十分に捉えきれなかった、青銅器の原料の入手事情や調合方法などの問題を解決できるのではないか。青銅器の原料のサプライチェーン(供給網)を東アジアで捉えることが可能になるだろう」と話す。
日鉄テクノロジー文化財調査・研究室の渡辺緩子(ひろこ)室長は「青銅器がなぜ今でも現存しているのかというところまで解明できたらいいなと思う」と述べた。
現在は1962年に分析結果が公表された青銅器を再分析しているという。連携研究の中間成果の報告会「東アジアにおける青銅器の価値を探る」を来年3月1日午後1時から、松江市の島根大で開く。