上田秀人さん=2022年、大阪市中央区

 上田秀人という作家は手練(てだ)れであった。時代小説文庫で複数のシリーズを抱え、ひと月のうちに何冊も刊行し続けた。かほどのペースは、自らを律する厳しさがなければとても維持できない。

 私が感嘆まじりに口にすると、上田さんは、いやいやと目を細めた。

「歯科医と兼業してた頃は、患者さんに麻酔の注射を打…

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