聖隷クリストファー―静岡 四回裏2死三塁、静岡・唐国が投手高部のグラブをはじく適時打を放つ。捕手武智=2025年7月28日午前11時5分、草薙、青田秀樹撮影

 (28日、第107回全国高校野球選手権静岡大会準決勝 聖隷クリストファー3―1静岡)

 3点を追う四回裏、静岡は2死三塁の好機を作った。打席に向かったのは5番・唐国晃輔選手(3年)。聖隷クリストファーのエース高部陸投手(2年)の4球目、振り抜いたバットはボールをとらえたが、芯を外した。「打ち損じたか」。打球は投手のグラブをはじいて後方へ転がり、一塁ベースに頭から滑り込んだ唐国選手はセーフに。チーム初の得点になった。

 小学生のころから静高で甲子園に出るのが夢だった。県内出身の唐国投手にとって、一番身近な強豪校。最後に優勝した4年前の夏の決勝も草薙球場で観戦したという。

 希望がかない静岡へ進学したが、昨夏は出番がなく、チームも準決勝で聖隷に逆転負けした。最後の夏は「甲子園で勝利」が目標になった。「誰よりも一番、バットを振り込んだ」と池田新之介監督は評する。

 甲子園へ行くには、高部投手を打ち崩さなければならない。力のある直球に打ち負けないため、チームの左腕に打席の近くから直球を投げ込んでもらう練習を重ねた。

 それでも、この日の高部投手の投球は一枚上だった。「思ったよりも差し込まれた」。手元で伸びるような低めの直球に、チームは終盤まで苦戦した。

 そして九回2死。万事休すの場面で唐国選手に打席が回ってきた。「最後というつもりはなく、逆転できるとしか思っていなかった」。ファウルなどで7球粘ったが、二ゴロに倒れた。滑り込んだ一塁ベース上で、唐国選手はしばらく立ち上がれなかった。

 甲子園へ出場する夢はかなわなかった。それでも「今はやりきったという感情が一番大きいです」。「後輩たちは、自分たちより打力がある。投手を中心に守備からリズムを作って勝てるチームになってほしい」

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