静岡県富士宮市議会の住民投票条例案の審議をめぐり、市側の答弁を問題視した市議が「法的手段を講じる」と市に通告したことが明らかになった。須藤秀忠市長は4日の会見で、答弁に問題はなく、「萎縮につながる」と批判。市議会議長に対し、抗議と対応を求める申入書を提出したと説明した。
通告したのは近藤千鶴議員(無会派)。答弁をした篠原晃信副市長あてに8月13日付で文書を送り、市側は同22日に市長名の文書で回答した。
住民投票条例案は、市の郷土史博物館事業の賛否を問うもので、市民グループが有効署名を集めて直接請求した。市長は反対の意見書をつけた議案を6月定例会に提案し、反対多数で否決された。
「回答はかみ合っていない」
問題視したのは6月20日の本会議。近藤氏が賛成討論で「議会がすべて正しいとは言わない。補完する意味での直接請求」と述べたことに、副市長は「違和感のある言葉」と発言。「議員の皆さんいかがでしょうか」「議会で議論いただきたい」などと答弁した。
近藤氏は通告書で、副市長の発言を「法的根拠がなく市民を侮辱するもの」「越権行為」とし、市議らが近藤氏に対する処分要求書を議長あてに提出することにつながったと指摘。誠意ある対応がなければ損害賠償請求訴訟や名誉毀損(きそん)罪での刑事告訴を検討する、とした。
これに対し、市は答弁を「何ら問題はない」とし、近藤氏の議会討論を「(博物館事業の)これまでの議決を否定するもの」と指摘。通告する行為を「当局の萎縮につながる」と抗議した。
近藤氏は取材に、「市の回答はかみ合っておらず、真摯(しんし)な対応とはいえない。裁判を検討している」と答えた。