静岡大学=静岡市駿河区

 統合再編を議論している静岡大と浜松医科大の両学長が来年3月末に任期満了を迎えるのに伴い、両大の次期学長選考が始まる。統合再編の行方を占う重要な選考になるため、学内だけでなく学外からも注目される。

 静大は3日に候補者が公示され、日詰一幸学長と近藤真副学長の一騎打ちになった。統合再編に慎重な日詰氏と、推進を目指す近藤氏という構図になりそうだ。

 両大は2019年3月、一つの法人の下に「静岡地区大学」と「浜松地区大学」をぶら下げる「1法人2大学」で合意した。静大浜松キャンパスの工学部と情報学部は浜医大と一緒になり、22年度から入学生を受け入れる計画だった。

 しかし、分割を伴う静大では静岡キャンパスを中心に反対意見が相次いだ。20年秋の学長選考で日詰氏が統合推進派の候補を破って選出されると、21年1月に両大は計画の延期を発表した。

 同年4月に就任した日詰氏は会見で「(合意書を)白紙にはしない」「対話を重ねて、賛成反対の両者の着地点を見つける努力をする」と述べた。22年、両大学を最終的に統合する「1法人1大学」案を示したが、浜医大の反発を受け、23年12月に折衷案として「1大学2校」案を提案した。しかし、合意通りの1法人2大学案を主張する浜医大は受け入れず、議論は平行線をたどっている。

 再任を目指す日詰氏は引き続き、静大の学部が分割される1法人2大学案には反対する姿勢とみられる。支持する教員の1人は「日詰氏は『総合大学』であることを重視している。膠着(こうちゃく)状態に自ら決着をつけようと、再選に手を挙げたとのではないか」と話す。

 一方、近藤氏は静岡キャンパスで教養部助教授を務めた後、新設された情報学部のある浜松キャンパスに移った経歴を持つ。情報学部長などを経て、21年4月に副学長に就いた。

 両大の合意通りの統合再編に賛成し、23年4月の同大教育研究評議会では「法人統合は静岡大学が生き残るために必須の条件で、これを外したら生き残りの目は限りなくゼロに近くになるだろう」と発言したこともある。推進派の教員は「日詰学長は再編の議論を停滞させ、静大の信用を低下させた。近藤氏は両キャンパスの状況を理解しており、問題解決に最適だ」と期待する。

 静大は、両氏の抱負等発表会を今月30日に開き、10月中旬に教職員による意向投票を実施する。学長選考・監察会議が同22日に両氏と面接し、意向投票の結果を参考に同30日に次期学長を発表する予定だ。(青山祥子)

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 浜松医科大の学長任期は1期6年のみだが、現在の今野弘之学長は2025年3月末までの3年間に限っての再任が認められた。

 静岡大との統合再編への「検討を進める継続性」を重んじたためだが、膠着(こうちゃく)状態のままでの交代となる。

 次期学長の推薦や公募は4日が締め切り。学内外半数ずつ計10委員からなる「学長選考・監察会議」の書類審査で10月初めに3人以内に候補を絞り、公開ヒアリングを踏まえて12月10日ごろまでに次期学長を事実上内定する。

 選考基準には、「1法人2大学」を定めた合意書に沿う形での大学再編を「完遂する強い意思と能力を有する者」と明示しており、次期学長も、これまで通りのスタンスを続けるとみられる。

 浜医大の関係者は「統合再編の行方は静岡大のトップしだいだ」とみており、浜医大はもちろん静大の動きに注目している。(青田秀樹)

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