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安藤優子さん
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 20世紀後半、テレビに出演する政治家の一挙一動が政局を動かす構造は、「テレポリティクス」と呼ばれた。1980年代からキャスターなどとしてテレビ報道の一線で活躍し、2022年には学術書「自民党の女性認識」を著した安藤優子さんは、テレポリティクスが女性の政界進出に果たした役割を評価しつつ、その功罪についても言及する。ネットの力が増す中、テレビは今でも力を持ちうるのか。

 ――1980年代当時、「テレポリティクス」をどう実感していましたか

 80年代以前は、国民の一番の信頼は活字メディアに置かれていました。一方でテレビは、政治家にとっては自らの姿をさらされるもの。テレビで政治家が注目されるのは不祥事のときぐらいだったんですね。利用する手段とはみなされていなかった。政治とテレビの距離は今よりもかなり遠かったのです。

 それが変わることになった一画期が、私もリポーターやキャスターを務めていた「ニュースステーション」(テレビ朝日系で1985年から放送)だったと思います。政治家をスタジオに呼んで生放送でしゃべってもらうことは、ともすれば一方的な話をされるリスクも伴います。でも、それを引き受けた上で、キャスターがバランスを取りつつ伝える。あの番組はその手法を積極的に用いた番組でした。

派閥取材で「女性は出て行って」

 ――当時から政界取材に取り組んできました

 ある自民党派閥を取材したときのことを覚えています。番記者の懇談会に向かったのですが、けげんな顔をした職員が「女性は出て行って下さい」と入れてくれませんでした。

 政治取材の場には、今では考えられないほど女性が全くいなかった。私は記者とみなしてもらえていない、「珍獣」みたいな扱いをされる違和感がずっとありました。政治経済の「硬派」なニュースを取材するのは男、女性は「女性らしい」「やわらかい」話題を取材していればいい、という考えが現場にとても根強かった。

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 ――スタジオではいかがでしたか

 テレビもやはり男社会です。女性はアシスタントや聞き役とされ、にっこりうなずく「従」の役割が長らく求められていました。

 94年に始まった「ニュースJAPAN」(フジテレビ系)でメインキャスターを務めましたが、女性のメインキャスターは当時非常に珍しかった。「違和感を持たれるのでは」と不安を述べた私に「そんなことはない。十分取材経験を積んでいるんだから、やってみてほしい」とフジの経営陣が送り出してくれました。確かに、視聴者は意外とすんなり受け入れてくれました。あのころから、徐々にテレビでの男性と女性の力関係が対等に近づいてきたと思います。

後半では、安藤さんが著書で分析したメディア出身政治家のキャリアパスや、テレポリティクスの功罪についても話を聞きました。

 ――著書「自民党の女性認識」では、キャスターや記者などメディア出身の政治家のキャリアパスについても触れています

 男性のメディア出身者は、議…

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