韓国大統領選で、尹錫悦(ユンソンニョル)・前大統領を糾弾してきた進歩(左派)系「共に民主党」公認の李在明(イジェミョン)氏が当選し、4日、大統領に就任しました。称賛と嫌悪が入り交じる「個性の塊」のような新指導者で、日本に対してもハードライナー(強硬派)として知られています。日韓関係を含めた李政権の外交・安全保障政策はどうなっていくのでしょうか。長く韓国政治を研究し、今回の選挙でも直前まで現地で調査してきた慶応大教授の西野純也さんに聞きました。

西野純也さん

 ――予想通りの結果となりました。勝因は何でしょう。

 「今回は戒厳令を出した保守(右派)の尹錫悦・前大統領の弾劾(だんがい)・罷免(ひめん)に伴う選挙であり、戒厳を審判する意味もあって進歩側に有利でした」

罷免(ひ・めん)された韓国の尹錫悦(ユン・ソン・ニョル)前大統領を支持する集会で「ユンアゲイン」と書かれたプラカードを掲げる参加者=2025年4月12日、ソウル、貝瀬秋彦撮影

 「その上で李氏が支持された理由は主に三つだと思います。まず何人かの歴代大統領もそうでしたが、彼にはストーリーがある。貧しい家庭に生まれ、苦学して弁護士になり、政治経験を着実に重ねてきました」

 「二つ目に李氏が地方自治体の首長時代、人々の身近な暮らしをよくした実績がある、と見なされていることです。3年前の大統領選でも強く感じましたが、今の韓国では天下国家を語るような大テーマより、生活に密着した問題に関心が向かっています。3年前は薄毛治療やかつら購入への保険適用なども話題になった。李氏はそのような有権者のニーズに見合う政治家だと言えるでしょう」

 ――三つ目は?

 「政治力です。確かに李氏の評価は分かれますが、結果として、伝統ある巨大な進歩政党を自分の政党に作り上げました。党首として昨年の総選挙に大勝したことは大きな政治的資産になっています」

 ――長く韓国大統領選を取材してきましたが、今回は何とも妙な選挙でした。進歩の支持者の中にも、李氏だけは嫌だと言う反対派や、政治指導者にふさわしくないが、政権交代が必要なのでやむなしとの消極的支持派もいました。

 「圧倒的に有利な選挙戦で、李氏はもっと得票してもよかったかもしれませんが、そこは本人のマイナスのイメージが影響したと思います。韓国で深刻な社会の分極化も背景にあります。保守と進歩で真っ二つに分かれた状況で、誰が候補でもそこそこの得票はできる構図です」

 ――三つ目の勝因に関係しますが、李氏の高い政治力は、逆に言うと党内の批判派を力で抑えてきたという経緯もあり「独裁的」との批判があります。

 「その意味で李氏が今後、ど…

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