韓国の憲法裁判所は24日午前、韓悳洙(ハンドクス)首相に対する弾劾(だんがい)訴追を棄却した。韓氏は、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が「非常戒厳」を出した際の首相としての対応や、尹大統領が弾劾訴追された後の権限代行としての行為の違憲・違法性が問われていた。韓氏は職務停止が解かれ、大統領の権限代行に復帰した。
憲法裁の8人の裁判官のうち5人が棄却、1人が認容、2人が却下との意見だった。いずれも非常戒厳の違法性の判断などには言及しなかった。
野党議員らで構成する訴追団側は、韓氏が首相として尹大統領の非常戒厳宣布による「内乱行為」を幇助(ほうじょ)、黙認したと主張していたが、憲法裁は韓氏が「積極的な行為をしたと認めるほどの証拠や客観的資料は見つけることができない」などとして退けた。
韓氏は尹大統領が昨年12月14日に国会で弾劾訴追され、職務停止になったことに伴い大統領の権限代行に就いたが、自らも同27日に国会に弾劾訴追された。
憲法裁での弾劾審判では定数9の裁判官のうち6人以上の賛成で罷免(ひめん)が決まる。尹大統領の弾劾審判にあたり、3人欠員の状態では全員の賛成が必要となるため、野党側が速やかな補充を要求。韓氏が保留という形で事実上拒否したため、反発した野党による弾劾訴追につながった。
憲法裁の多数意見は任命の保留は違法だと判断したが、「国民の信任を裏切った場合には該当せず、罷免を正当化する事由が存在するとはみられない」などとした。
韓氏は弾劾審判で、自身は非常戒厳の宣布に反対したなどとし、弾劾訴追には理由がないと主張していた。
韓氏に対する弾劾審判の論点は、近く示されるとみられる尹大統領の罷免の可否に関する論点と一部が重なり、憲法裁の判断が類推できる可能性もあるため注目されていたが、尹大統領の審判への影響は不透明だ。
韓氏の復帰で、崔相穆(チェサンモク)経済副首相兼企画財政相が大統領の「代行の代行」を担う異例の体制は終わることになる。憲法裁は尹大統領への宣告期日をまだ示していない。