藤倉大作曲のピアノ協奏曲「Akiko’s Piano(明子さんのピアノ)」を、被爆ピアノで演奏するピアニスト小菅優さん。クリスティアン・アルミンクさん指揮の広島交響楽団と=広島市、広島交響楽団提供

 広島、長崎への原爆投下から80年となる今年、原爆や戦争をテーマにした演奏会が例年以上に各地で開かれている。ウクライナやパレスチナ自治区ガザで戦闘や人道的に困難な状況が続くなか、音楽が果たす役割や平和の意味を問う試みだ。

 ビバルディ作曲「四季」の演奏、録音で世界的に知られるイタリアのイ・ムジチ合奏団は9月に東京、札幌、横浜、大阪、埼玉(越谷)で原爆をテーマにした新曲「二輪の花(HiroshimaとNagasaki)」を世界初演する。被爆80年の来日ツアーに合わせて同合奏団が実施した国際作曲コンクールの応募作からイタリアの作曲家アントニオ・マルコトゥッリオさんの作品を選んだ。二つの都市がたどった「破壊」と「再生」の運命に着想を得た4楽章の組曲で、花が摘まれても種から再び咲くように、両都市がかつての輝きを取り戻したという希望をタイトルに込めた。

原爆をテーマに新曲を書いたイタリアの作曲家アントニオ・マルコトゥッリオさん

 同合奏団は過去に来日した際に、団員の多くが広島の平和記念公園を訪問した経験を持つ。団員でピアノ奏者のフランチェスコ・ブッカレッラさんは「人類の歴史に二度とこのような惨事が起こらないよう、言葉と思いを表現できる音楽を通して、心から平和を願い、今こそ悲惨な出来事を記憶に残すことに取り組む時だと考えた。たとえ悲劇的な出来事の記憶からでも、何か美しいものが生まれ、後世に受け継がれていきますように」と語る。

被爆ピアノをテーマにピアノ協奏曲第4番「Akiko’s Piano(明子さんのピアノ)」を作曲したロンドン在住の作曲家藤倉大さん=石合力撮影

 広島交響楽団(広響)は7月24日、広島市で被爆80年の特別演奏会を開いた。ポーランドの作曲家ペンデレツキ(1933~2020)の「広島の犠牲者に捧げる哀歌」、ロンドン在住の作曲家藤倉大さんが、被爆ピアノをテーマに書いたピアノ協奏曲第4番「Akiko’s Piano」などを演奏した。

 「哀歌」は、幼少期、ナチス…

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