「ヒンド・ラジャブの声」

 イタリアで開かれた第82回ベネチア国際映画祭は、米の鬼才ジム・ジャームッシュ監督による静かな家族ドラマ「ファーザー・マザー・シスター・ブラザー」に最高賞の金獅子賞を贈り閉幕した。だが映画祭の中心でとどろいたのは、パレスチナ自治区ガザの小さな女の子が車の中から助けを求める声だった。

 21作が競うメインのコンペティション部門で本命視されたのは「ヒンド・ラジャブの声」だった。イスラエル軍の攻撃により親族の死体と共に車の中に独り閉じ込められた幼いヒンド・ラジャブが、パレスチナ赤新月社の職員に電話で助けを求め続けたという実話を基にしたドラマ。通信指令室に焦点を当て、電話の向こうのおびえた声や銃声に涙しながら、救急車を送るルートを確保しようと努力する職員らの焦りと怒りが、観客をのみ込む。

 エグゼクティブプロデューサーにブラッド・ピットやホアキン・フェニックスら大スターが名を連ね、公式上映で巻き起こった23分間ものスタンディングオベーションは、ベネチアの熱を伝えるニュースとして世界を駆け巡った。

審査員長「別の結果になったかも…」

 地元紙の評論家らによる星取…

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