自然豊かな山地を切り開き、開発することもある風力発電。東北は陸上風力の計画が多く、生態系への影響も懸念される。日本自然保護協会保護・教育部の若松伸彦保護チーム室長(47)に、陸上風力が生態系に与える影響や、求められる対策などを聞いた。

 ――陸上風力が自然環境に与える影響について、日本自然保護協会が9月に報告を公表しました。

 「1984年以降に実施された環境アセスメント対象事業を調べたところ、2012年以降に手続きの開始件数が急増し、20年には年100件を超えていることがわかりました。ほとんどが風力発電です。近い将来には年70件以上、アセス最終段階の『評価書』が発行される見通しで、これは1990年代のゴルフ場建設並みの多さ。今、自然環境に対して最も懸念が大きい事業は陸上風力と言えます」

 ――具体的にはどんな影響があるのですか。

 「猛禽(もうきん)類などの希少な鳥類への影響です。風車は固定価格買い取り期間の20年間、原則として稼働し続けるため、影響を与え続けます。生息地が失われ、風車のブレードに衝突する事故(バードストライク)の危険にさらされます」

 ――どれくらいの被害が出ているのですか。

 「北海道では2003年~21年に海ワシ類のバードストライクが73件発生、東北では08年に岩手県でイヌワシ、23年に山形県でクマタカの衝突死がありました。猛禽類は日本の生態系の頂点にあり、生息数も少ないため、たとえ1羽が死んだだけでも周辺の生態系への影響は大きいのです。アセス中の事業エリアに猛禽類の生息地が含まれるのは67%(169件)あり、今後が心配です」

 ――東北では風力の導入が進んでいます。

 「事業ごとに、希少鳥類の生息や保安林の面積、国立・国定・自然公園の有無など自然環境への配慮状況を数値化したところ、ワースト10のうち6件が東北での事業でした(うち1件はその後に計画中止)。青森県深浦町での事業は、計画エリアにイヌワシやクマタカが生息している可能性があり、生物多様性重要地域でもあります」

 ――なぜ東北は風力の計画が多いのですか。

 「風況が良いことに加え、山…

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