国宝「菩薩半跏(ぼさつはんか)像(伝如意輪観音)」(中宮寺蔵) 後期展示

 奈良国立博物館で開催中の特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」(朝日新聞社など主催)。20日から始まった後期展示には、奈良・中宮寺の菩薩半跏(ぼさつはんか)像が登場。展示中の奈良・法隆寺の観音菩薩立像(百済観音)とあわせ、多くの人たちを魅了している。

光のオーラまとう百済観音

 初期仏教美術を代表する飛鳥仏の至宝が2体。暁の陽光を受けて朱に染まるかのような百済観音(法隆寺)、対して純白の部屋で強烈に存在感を主張する菩薩半跏像(中宮寺)の漆黒の輝き。その対照的な演出の妙に、あなたは気づいただろうか。

 すらりと屹立(きつりつ)する百済観音は、その下地となった白土のせいか、まるで光のオーラをまとうかのよう。なるほど、着色の剝落(はくらく)も含めて千年以上にわたる経年の産物ではあろう。が、それが御仏(みほとけ)の尊顔をより神秘的にし、複雑な色合いを増幅するのだ。

 仰ぎ見れば、誰もが感じるはずだ。たおやかさと共存した強靱(きょうじん)な意志、いまなお静かに進行する柔と剛のせめぎ合い、を。そこに飛鳥びとの激しくあつい信仰をみた評論家の亀井勝一郎は「大地から燃えあがった永遠の焰のようであった。人間像というよりも人間塔――いのちの火の生動している塔であった」と自著「大和古寺風物誌」に記す。

 一方、哲学者の和辻哲郎がそこにかぎ取ったのは「何か神秘的なもの」「形によって暗示せられる何か抽象的なもの」(「古寺巡礼」)であった。抽象的な「天」が、具象的な「仏」に変化する驚異――。和辻の言わんとするところは難解だけれど、その答えを求めて思いを巡らすのも悪くない。

 展覧会ならではのメリットは…

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