生まれ育った故郷に、かつてのにぎわいはない。実感するのは町の「老い」だ。東京都日野市と多摩市にまたがる、丘陵地帯に位置する百草(もぐさ)団地。小谷野大樹さん(41)はこの夏、その一角に小さな店を出した。メニューは数品。ない商品は「近くの店で買ってきて」。商店街に残る店と店をつなぎ、活気を生み出したいとの思いがある。
団地は1969年度につくられ、約2400戸の住宅が立ち並ぶ。保育園や幼稚園もあり、小谷野さんが育った頃は、子どもたちの声が響いていた。パン屋、八百屋、洋食店、ホームセンター……。商店街は家族連れらでいつもにぎわっていた。店主も住民も、みんな知り合い。道を歩けば誰かが声をかけてくれた。
でも、ずっと「出たいと思っていた」。テレビで見る渋谷や六本木は、近くて遠い場所。都心に憧れ、高校卒業後は目黒区へ。クラリネット奏者として、全国のライブハウスやイベントで演奏した。
しかし、数年後、ストレスか…