コロナ禍で行動が制限された。パレスチナ自治区ガザにイスラエル軍が激しい攻撃を始めた。数年前から患っていたがんとの闘病も続いていた……。
国立民族学博物館(民博、大阪府吹田市)准教授の菅瀬晶子さんは、イスラエル、パレスチナ地域に住むカトリック教徒のアラブ人を研究する文化人類学者だった。長年続けてきた現地のフィールドワークができないもどかしい時間の中で、昨年6月に1冊の絵本を出版した。
「ウンム・アーザルのキッチン」(絵・平澤朋子さん)。大学院生のときに知り合った友人ウンム・アーザルさんの暮らしを題材にした1冊だ。イスラエル北部ハイファで暮らすアラブ人キリスト教徒の女性。彼女の家で一緒に暮らした日々を、「ある夏」の1週間という形で描いた。
版元は、「ぐりとぐら」「はじめてのおつかい」などで知られる福音館書店。小学3年生以上を対象にした月刊絵本「たくさんのふしぎ」の第471号として出版された。
「それが人類学者の義務なんです」
4人のこどもを育て上げ、山…