連載「101歳の手記~80年前の記憶」
戦後80年となり、体験者の肉声を聞けなくなる時が迫っています。亡くなった体験者の中には、自身の体験や思いを記録にとどめてきた人たちもいます。いまは亡き夫婦の記した手記から、足跡をたどりました。
坂の町・長崎。その一角の細い階段を下った先に、年季の入った木造の建物がある。昨年101歳で亡くなった佐賀市の今泉サト子さんは、かつてここで暮らしていたという。
今も同じ地域で暮らすめいの池田直子さん(79)が、そう教えてくれた。サト子さんが亡くなる前に戦争体験の手記を書いていたことは、直子さんも知っていたという。「おばが生きていて一緒に話をすれば、おばも思い出したりすることがあったんじゃないかと思うんですけどね」と惜しむ。
サト子さんの写真を探してくれたという直子さんが、その時見つけたという集金袋を見せてくれた。サト子さんが通った瓊浦(けいほ)高等女学校(現・瓊浦高校)時代のもののようだ。何げないものだが、サト子さんが長崎にいた証しだ。
佐賀市のサト子さんの自宅には、17歳だった1940年に卒業した同校の卒業アルバムも残っていた。表紙の裏側には友人たちの寄せ書きが並んでいた。
《すみれの園で学びし友よ 永久の幸福を祈る》
体育大会や学芸会、修学旅行…