コメの価格が下がってきたとはいえ、昨年と比べると高い水準のまま迎えた参議院選挙。コメをめぐる論戦が盛り上がるかと思いきや、低調なまま与党の敗北で終わった。政権の継続が厳しくなり、石破茂首相が着手した「コメ政策の転換」も雲散霧消しかねない情勢だ。コメの増産という方向性は主要な野党と一致するものの、先行きは見通せない。
「減反を続けてきたことによって、お米が足りない」「日本のお米を待ち望んでいる人は世界にたくさんいる」。首相は参院選の遊説で、コメを増産する意義を説いて回った。
水田の大規模化で生産コストを下げたり、低コスト化が難しい棚田で稲作を続けたりする農家を例に挙げ、「努力に報いていかなければならない」と支援も示唆した。
政府が1970年代から本格化した減反は、国内のコメの需要が減るのにあわせて生産量を抑える政策だった。2018年に廃止後も、飼料用のコメづくりに補助金を出すなどして主食用からの転作を促し、生産量の調整は続いていたとされる。
これまで生産量を抑えてきたのは、コメ余りを防いで米価を維持し、農家の収入を安定させるためだった。だが、農家の意欲をそぎ、コメづくりの発展を阻害しているという批判も絶えない。首相は参院選の公示直前に開いた関係閣僚会議で、「不安なく増産に取り組めるような新たなコメ政策へと転換する」と明言していた。
参院選では、主要な野党もこぞってコメの増産につながる政策を掲げた。背景にあるのは、昨夏に店頭からコメが一時消えた「令和の米騒動」と、その後の米価の高騰だ。
ところが、「コメの問題は、そんなに主要な争点にならなかったですよね」。参院選後、22日の会見で小泉進次郎農林水産相はそう振り返った。
与党側の主張が具体性に欠け…