精神科医の香山リカさん(64)がこのほど、秋田市で講演した。今は北海道むかわ町の診療所でへき地医療に取り組む香山さん。これまでに巡り合った「学ばされた人々」を紹介しつつ、「自分を褒めれば心にゆとりが持てて、助けを必要としている人に自然と声をかけられる」と語りかけた。
「比べる病」やめよう
人通りの少ないむかわ町の田舎。ある農家の人が家の前に、ハロウィーン用のお化けカボチャをたくさん並べていた。
香山さんは失礼を承知で聞いてみた。「せっかく並べてもほとんど誰も見てくれないんじゃないの?」。するとその人は「そうかい?」と驚いた様子。「自分が気持ちいいからそれで楽しい。今年もよくできたなって」と屈託なく話した。
今のネット社会では、多くの人から見てもらって、「いいね」がつかないと意味がない。そう思って、自分への肯定感を下げている人があまりに多い、と香山さんは指摘する。「『比べる病』にとりつかれないで。自分で自分の価値を切り下げてしまうのはやめませんか」と呼びかけた。
真面目な人ほど悩む「その比べ方は間違い」
コロナ禍のころ。マジシャンの男性が診療に来て、「私がやってきたことに意味がなかった。生きていても仕方ないという気持ち」と話した。
得意のテーブルマジックが、密を避ける必要からできなくなった。「非常事態になると真っ先に切られてしまう仕事。手品がなくても誰も困らない、世の中が回らないなんてこともない」と肩を落とした。
香山さんは「こんなふうに…