流れ着いたアカウミガメ。このときすでに死んでいた=2021年9月、愛知県南知多町篠島、辻満剛さん提供
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 小さな島に、アカウミガメの死体が流れ着いた。埋葬する際、集まった子どもたちを前に、専門家は言った。「2、3年したら骨格標本ができるよ」。2年余り経った今年1月、先生や大人が掘り起こしてみたけれど骨はバラバラ。バケツやたらいで計9個分もある。「標本にして見せてあげたい」。そんな思いに突き動かされ、大人たちが毎晩、「格闘」を続けたら……。

 1匹のアカウミガメが2021年9月、愛知県・知多半島の南端沖に浮かぶ人口1500人の篠島(南知多町)の浜辺に漂着した。

 甲羅の長さは85センチ、幅は67センチ、推定体重100キロ。すでに死んでいた。

 知多半島におけるウミガメの上陸、産卵状況を40年以上、調べている南知多ビーチランドから、飼育員の伊藤幸太郎さんが駆けつけた。死体を調べた後、砂浜に埋葬することになった。

 島唯一の小学校・篠島小の児童や住民の前で、伊藤さんは「2、3年して掘り起こしたら骨格標本ができるよ」と言った。

 絶滅が危ぶまれているアカウミガメ。その産卵場は、北太平洋では日本の沿岸域にほぼ限られ、篠島はその一つだ。

 埋葬から2年余り。この間、教頭だった寺澤順也さん(52)に、児童たちは「早く発掘したい」「いつ掘るの?」と何度もせがんだ。

 今年3月末の転勤で島を離れ…

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