高倉健さんも愛したという楕円形のオーバルカウンターも健在だ=2024年10月22日午前10時27分、京都市中京区、日比野容子撮影

 俳優の高倉健さんも愛した京都の老舗喫茶店「イノダコーヒ」の三条店(京都市中京区)が29日、リニューアルオープンする。近くにある本店の「5番カウンター」と並び親しまれてきた楕円(だえん)形のオーバルカウンターも健在だ。

 「新店舗のキーワードはニュー・クラシカル。伝統ある古きよきものを残すとともに、若い世代にも親しんでもらえる店作りにこだわりました」

 こう語るのは、かつて商社マンとして世界のコーヒービジネスの最前線にいた前田利宜社長。創業家の猪田家から誘われトップに就いた。観光客がそぞろ歩く三条通に面した店舗は2022年3月に休業し、約2年半の耐震工事を終えた。

 「古き良きもの」の代表が、1970年に三条店が開店した当初からあるオーバルカウンター。渇いたのどを潤すだけでなく、客同士の交流が生まれる社交場を提供したいというイノダコーヒの原点を体現している。

 「高倉健さんはふらりと訪れては坪庭を望む、このオーバルカウンターに座っておられました」と河本純子店長。

 今回、2階席を新たに設け、席数は55、56席から91席に増やした。若い世代にも足を運んでもらいやすいように、明るく開放感のある雰囲気にした。本格的な厨房(ちゅうぼう)も設け、軽食を充実させた。「非日常」を味わってもらおうと、BGMは流さない。

 午前10時~午後7時。無休。問い合わせは三条店(075・223・0171)。(日比野容子)

イノダコーヒとは

 イノダコーヒ 1940年にコーヒー豆の卸売商店として創業。創業者の猪田七郎氏は画家で、作家の谷崎潤一郎ら文化人と交流があった。代用コーヒーしか飲めなかった戦後、本格的なコーヒーを出す店として京の旦那衆らに親しまれた。創業家の猪田家は2022年、事業承継を目的として投資ファンドに株式を譲渡。自慢の一杯は、創業時から伝わる「アラビアの真珠」(750円)だ。「京都の朝はイノダコーヒの香りから」とも言われ、京都市内6店、東京、横浜、広島の計9店舗ある。

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