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 3月の大相撲春場所後、あちこちから聞こえてきた。

 「高安、またダメだったね」

 千秋楽の優勝決定戦で敗れ、またしても賜杯(しはい)を逃した。が、これまでとは違い、どの人の言葉にも失望やあきれは混じっていなかった。

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春場所千秋楽、本割で阿炎を攻める高安(右)=田辺拓也撮影

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 高安は5年前に大関の地位を失った。最近は三役の座に就くこともない。35歳になった。

 慢性的な腰痛に苦しめられている。それでも、地力は他の力士をしのぐものがある。

 状態が良ければ、優勝争いにも絡む。

 千秋楽まで優勝の可能性を残したのは、この春場所が9回目。優勝決定戦に臨むのは実に3回目だった。

 優勝の2文字がちらつくと硬くなり、勝てなくなる。単独首位で楽日を迎えてもダメ。終盤に自滅し、周囲を落胆させるのがいつものパターンだったからだ。

 しかし、この3月は、確かに悲願が成就しそうな機運に満ちていた。

 13日目まで11勝2敗で単独首位。14日目に平幕に敗れ、大関大の里に星勘定で追いつかれた。

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2012年12月、旧鳴戸部屋で稀勢の里(右)と稽古する高安

 ここからだ。

 続く千秋楽の本割。小結阿炎…

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