高度経済成長の時代、産業の発展と文化財保護の間で激しい衝突が起きた綾羅木郷遺跡(山口県下関市)。国の史跡に指定された経緯を振り返るドキュメンタリー映像を、市立考古博物館が5月に公開した。保護に尽くした研究者だけでなく、遺跡を壊そうと動いた採掘業者も証言に協力した力作となっている。
弥生時代前期~中期の集落遺跡。西日本有数の規模で、1956年から始まった発掘調査では、環濠(かんごう)や1千基以上の貯蔵用竪穴が見つかった。66年には国内初となる土笛が出土し、遺跡のシンボルとして知られている。
だが一帯は、自動車のエンジンの鋳型に使われる良質な珪砂(けいしゃ)が採れる場でもあった。ある業者が65年に採掘を始めていた。
市教委が緊急の発掘調査を進めると、貴重な発見が相次ぎ、文化財指定の機運が高まった。指定されれば採掘ができなくなる――。そう危惧した業者は69年の3月8日夜、ブルドーザー11台を走らせて遺跡を壊し始めた。
事態を重く見た文化庁は3日…