絹谷幸二さんは何度でもポーズを決めてくれた=2022年4月3日、奈良市元林院町、米田千佐子撮影

 奈良市出身の洋画家で文化勲章も受章した絹谷幸二さんが8月1日、82歳で亡くなった。同僚記者とともに絹谷さんを取材したのは2022年3~4月。高松塚古墳壁画(奈良県明日香村)発見50周年の連載企画のためだ。「絵画として一級品でしたね」。壁画を現地調査した当時を語る目が、生き生きと輝いていた。

 1972年、絹谷さんはフレスコ画を学ぶためイタリア・ベネチアにいた。日本から送られてきた新聞で壁画発見を知り、「感動で震えました。『すごいものが出たな』と」。フレスコ画と壁画の技法は、漆喰(しっくい)に顔料で描くという点で似ていた。

 フレスコ画が日本ではほとんど知られていない時代。「道なき道をひらくような孤独な闘いだったけれど、故郷から私の応援団が現れたと思いました」。壁画に描かれた男子群像や女子群像を指しているのだろう。

「ここは詳しくは書かないでね」

 その後、日本の文化庁からの…

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