鹿西―日本航空石川 三回、日本航空石川の攻撃を三者凡退に打ち取り、笑顔でハイタッチする春成勇希選手(右)=2025年7月14日午後0時49分、石川県立野球場、砂山風磨撮影

(14日、第107回全国高校野球選手権石川大会2回戦 日本航空石川11―0鹿西=五回コールド)

 8点を追いかける四回表、鹿西の春成勇希選手(3年)が先頭で打席に立った。「大差がついている中で、チームを盛り上げたい」。低めの球を捉えると、センター方向へ打球が抜けていくのが見えた。春成選手にとって、公式戦初めての安打となった。

 高校から野球を始めた。バスケットボール部だった中学時代、2019年に夏の甲子園で準優勝した星稜の試合をテレビで見た。バットに球が当たる音。アウト一つ一つにチームが盛り上がる一体感。そんな野球に憧れた。高校で野球部への入部を決めた。

 しかし、野球はバスケと違い、バットやグラブといった道具を使うスポーツ。「扱いが難しくて、打球を前に飛ばすのに苦労した」と話す。スイングの軌道を確認しながら、自宅でも黙々と素振りをした。休日で多い日は700回。それでも、公式戦でこれまで、ヒットは出ていなかった。

 この日記録した念願の安打。しかし、一塁を回って二塁をうかがうと「思ったより早くセンターからボールがかえってきた」。強豪・日本航空石川の素早い好送球の間に帰塁できず、タッチアウト。「うれしいというよりも、悔しい」と話した。

 五回コールドで敗れたが、春成選手は「諦めずに最後まで、自分のできることをやり続けるという『自分の野球』ができました」と笑顔で語った。

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