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 高校生が競技として麻雀に取り組もうと、部活や同好会をつくる例が増えている。前向きに評価する先生も多く、2025年1月に開かれる「全国高等学校麻雀選手権プレ大会」(朝日新聞社主催)に挑む生徒もいる。

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 兵庫県の県立高校に20日、真新しい全自動麻雀卓が届いた。

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実戦形式で練習する兵庫県立姫路東高校麻雀同好会のメンバーら=2024年12月20日、藤田明人撮影

 世界遺産の姫路城のそばにある姫路東高校(姫路市)に今年発足した麻雀同好会を支援しようと、学生麻雀連盟と麻雀用品大手の大洋技研(和歌山県御坊市)が無償で貸し出した。既に卒業生から寄贈された卓とあわせ、全自動2卓、手積み2卓の計4卓がそろった。

 同好会の設立をリードしたのは、代表の福田煌輝さんと副代表の村田有希真さん(いずれも2年)。きっかけは昨年、村田さんがたまたまプロ麻雀リーグ「Mリーグ」を見て興味を持ち、麻雀をやってみたことだった。

 村田さんに誘われた福田さんは、最初は「麻雀は何となくは知っていたが、ルールが複雑で難しいイメージがあった」。Mリーグの対局を見ているうちに知的な魅力に気づき、毎試合見るようになったという。「この局面でなぜこの牌を打てるのかなど、選手の思考が分かってくると面白い。めっちゃ頭を使うゲームだなと感じた」

 ゲームのアプリで対局するのに加え、今年の春休みには麻雀マットと牌を買って、校内で打ち始めた。さらに仲間を集めて、6月に同好会の設立を申請。職員会議での話し合いなどを経て、7月に発足した。

 今は2年生13人が入会し、週3回の放課後に2~3時間練習している。参加は自由で、会員以外の生徒が交じることもあり、新しいつながりが生まれているという。12月には初めて校内麻雀大会も開いた。

 姫路東高は、文部科学省が指定するスーパーサイエンスハイスクール(SSH)で、探求活動に力を入れている。栗林秀忠校長は「自問自答を繰り返す麻雀は探求でもあるし、大局観も養われる。腹を立てたら不利なゲームなので、アンガーマネジメントにもなるのではないか。これから大会などで実績をあげれば、部に昇格して、活動予算もつけられると思う」と応援する。

 校内での麻雀で心配されやすいのは、生徒同士の賭け事につながることだ。福田さんと村田さんは「賭けは絶対にしない、と話したうえで入ってもらい、みんなに徹底している」と話す。

 発足当初はほぼ全員初心者だったが、役はほぼ覚え、今は点数計算を学んでいる生徒が多いという。1月11日に開かれる「全国高等学校麻雀選手権大会プレ大会(大阪大会)」にも挑戦する予定だ。

 公立高校では、新横浜駅に近い神奈川県立岸根高校(横浜市)で今年4月、麻雀同好会が発足している。

 麻雀に関心がある生徒らが立ち上げ、現在は1年生9人、2年生4人、3年生9人の合計22人が在籍。放課後に週2回、教室で練習している。麻雀に関心がある教職員が多く、顧問の金子玲王先生のほか、副顧問として9人の先生が生徒と卓を囲むことで、先生と生徒の新しい交流にもつながっているという。

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戦術の講義を真剣に聴く神奈川県立岸根高校麻雀同好会の生徒ら=2024年11月5日、山本倫子撮影

 9月にあった文化祭では、模擬雀荘をオープンした。保護者や地域の住民もやってきて、行列ができるほどのにぎわいを見せた。

 金子先生は「活動中にPTAの方や来校者の方に声をかけていただくようになった。生徒にとっては、年上の方と接する良い機会になっている。麻雀は他のプレーヤーへの思いやりが大切なので、常に相手のことを考えて行動することも学べている」と評価する。

 いち早く「健康麻雀部」をつくり、教育関係者や麻雀関係者から注目されているのは、埼玉県春日部市にある通信制高校との技能連携校、松実(まつみ)高等学園だ。

 人と人のつながりを生む麻雀の魅力に着目した斉藤友昭先生が主導し、2022年春に創部。現在は25人の部員がおり、毎週木曜はプロ麻雀選手を招き、牌効率などの戦術を本格的に学ぶほか、他の曜日も自主練習ができるようにしている。

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松実高等学園の文化祭では健康麻雀部のブースがあり、終始楽しそうな声が響いていた=2024年12月24日、藤田明人撮影

 実力が評価され、7月に静岡県であった健康麻雀の全国大会に部員が出るなど、他県への遠征の機会も増えている。地域とのつながりにも力を入れ、介護施設を部員が訪れ、高齢者らと対局することも多い。

 斉藤先生は「日々の練習で、道具を大切に扱うことや挨拶などの礼儀作法も身についている。また戦術面でも、例えばリーチを受けたときになぜその牌があたるのか、あるいは通るのかなどを自分たち自身で考えるようになった」と部員の成長を喜ぶ。まもなく卒業する部員のなかには、すぐにプロ試験を受ける生徒も2人いるという。

 斉藤先生は「部員の保護者からは『健康麻雀があるから楽しく通えている』と言って頂くこともある」といい、生徒の居場所を生み出すことにもつながっているようだ。

 1月19日に開かれる「全国高等学校麻雀選手権大会プレ大会(東京大会)」には、岸根高校、松実高等学園ともに多くのチームが出場し、実力を競い合う予定だ。

 ほかにも、ボードゲーム部の活動の一環で麻雀に取り組む高校が出始めるなど、学校内で真剣に麻雀を打つ風景は広がりつつある。

 姫路東高の栗林校長は「校長会の席で『うちに麻雀同好会ができた』と話すとみんなに爆笑された。受けるのは良かったんだけど、ただ将来はそれが普通になって、誰も笑わなくなるのがいいですよね」と話す。

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