「やっとここまで来ることができたんだ」
長く、日の目を見ることがなかった野球人生を振り返ると、奇跡のようにも感じていた。
川口冬弥、24歳。野球の四国アイランドリーグplus・徳島インディゴソックスに所属する身長187センチの大型右腕だ。
最速は155キロ。先発とリリーフをこなし、今季は3勝0敗7セーブで防御率1・37だった。59回3分の1を投げて85奪三振と圧倒し、チームの前後期優勝に貢献した。
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アマチュア時代の実績は、全くないと言ってもいい。
高校は、東京の強豪・東海大菅生だった。当時から身長は180センチを超えていたが、部員90人の中で「よく見積もって18番手くらいの投手」。最速は130キロそこそこ。「ただ背が高くて、長距離を走るやつだった」
3年のときにチームは全国選手権大会に出場したが、川口は一度も背番号をもらえないまま甲子園のアルプス席で高校野球を終えた。城西国際大でもリーグ戦で投げたのは4年生になってから。しかも、ひじの故障に苦しみ、数試合の登板で終わった。
「もう無理かな」。大学では何度もそう思ったが、あきらめきれなかった。とにかく試合に飢えていた。
当時、千葉県内のスポーツジムに通っていた。
そこで偶然知り合ったのが…