「タイから学ぶ多文化共生」を発表する大府高校3年生の5人。愛知大学国際コミュニケーション学部とオンラインで結んだ合同授業で、互いの探求の成果を学びあった=2025年7月8日、愛知県立大府高校、鈴木裕撮影

 文化や宗教が異なる外国人労働者や移民を、「ほほ笑みの国」はどう受け入れているのだろう。高校生が探究学習した「タイから学ぶ多文化共生」を発表する授業が、愛知県立大府高校と愛知大学の合同で開かれた。高校生が学んだのは、知らない文化を「知る」「受け入れる」、そして「拒否しない」ことの大切さだ。

 今月8日、大府高(愛知県大府市)と愛知大学国際コミュニケーション学部(名古屋市中村区)をオンラインで結んだ世界史探究の特別授業。ユネスコ・アジア文化センターのプログラムで2月にタイを訪れた野々山新教諭(世界史)の授業を基に、探究学習を進めてきた3年生の5人が発表した。

 わかりやすくまとめた発表用ソフトの資料を使い、アジアの国で日本と最初に修好条約(1887(明治20)年)を結ぶなど長い歴史を持つタイと日本の交流、仏教を中心にしながらもキリスト教やイスラム教にも寛容なタイの人たちの生活、多文化共生社会の実現に向けてタイから学べる視点について話した。

 多文化共生については、マレー系イスラム教徒が多いナラーティワート県で導入されている宗教的慣習に配慮したカリキュラムや、ミャンマーやカンボジアからの移民労働者が多い首都バンコクで生活支援などを手がけている民間の移民労働者支援センターを紹介。発表した廣野雅(ひろのみやび)さんは「言語、医療、法的なサポート体制の整備が社会の安定に寄与している」と指摘し、「文化の違いを『問題』ととらえるのではなく、『豊かさ』を感じられる社会が、タイから学ぶべきこと」と結論づけた。

 一方、愛知大の学生は、平田晶子准教授(文化人類学、東南アジア研究)とともに2月にタイでフィールドワークをした研究成果「宗教実践と環境保全」について発表した。

 仏教の「殺生戒」に基づく「木の出家」(樹木に僧侶の袈裟のような布を巻いて伐採を防ぐ)が行われている地域での聞き取り調査から、仏教だけではなく土俗的なアニミズム(精霊信仰)も影響していること、自然保護が目的ではないものの結果的に環境保全に貢献している、という報告を説明した。

 野々山教諭は「生徒や学生が時間をかけて取り組んできた探究成果を、相互に発表し合う貴重な機会になった。生徒はSDGs(国連の持続可能な開発目標)の視点でタイの文化から学ぶことを目的に学習を進めてきたが、現地で行ったフィールドワークに基づく学生の研究の奥深さに触れて、大学での学びにも興味を持てたのではないか」と話す。

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