高知県立美術館が贋作と判断した絵画。ドイツ人画家ハインリヒ・カンペンドンクの油彩画「少女と白鳥」として購入し所蔵していた=同美術館提供

安田篤生館長に聞く

 高知市の高知県立美術館が所蔵するドイツ人画家ハインリヒ・カンペンドンク(1889~1957)作とされる油彩画「少女と白鳥」に関し、同県は今月14日、「贋作(がんさく)と判断した」と発表した。96年に1800万円で同館が購入したものだが、なぜ専門家集団の公立美術館が見抜けなかったのか。安田篤生・同館長に話を聞き、考えた。

 森の中の水辺で戯れるかのように見える少女と白鳥の姿が、鋭角的な線と強い色彩で描かれている。1919年に描かれたとされる「少女と白鳥」は、これがドイツ表現主義の画家カンペンドンクの作品か、と思わせる。

 しかし、昨年6月にドイツの贋作画家ヴォルフガング・ベルトラッキ氏による制作の疑いが浮上。京都大の田口かおり准教授(保存修復/美術史)の科学的分析で、19年当時は絵の具の材料としては一般的ではなく、一方でベルトラッキ氏は用いた顔料「チタニウムホワイト」などが使われている可能性が高いことが判明。加えて、作品裏に同氏によるとみられる来歴偽造ラベルがあり、ベルリン州警察が作成した贋作リストにもこの作品が掲載されていたことから贋作と判断した。

 この絵は実在作品の模写ではなく、カンペンドンクの作風を模したシミュレーション作品だった。

後半では、美術館が真作と信じた理由について安田館長が語ります。美術品に関する法律に詳しい島田真琴弁護士にも話を聞きました。

 安田館長は、滋賀県立近代美…

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