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ブリュッセルの欧州連合本部で2021年7月14日、はためく欧州連合の旗=ロイター
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ニコラス・クリストフ

 私のようなリベラル派は、ヨーロッパを米国へのまっとうな教訓を与えてくれる魅力的な場所として見てきた。資本主義のとげとげしい部分をやわらげ、セーフティーネットを整え、幸福度において米国を上回る。米国と比べ、乳幼児の死亡率や出産の危険度は低く、寿命は長い。

 米国人が年間1800時間働くのに対し、北欧の人たちは年1400~1500時間ほどしか働かない。また、多くの人は必要な保健医療や保育、充実した公立学校を享受している。大学教育は無料か安価であることが多く、人々は銃を持つ権利より中絶の権利に価値を置く。トランスジェンダーの人がどちらのトイレを使うことができるかをめぐる激しい論争は避けられている。

 デンマークのマクドナルドでハンバーガーを焼く仕事につけば、時給は20ドル(約2860円)超で、6週間の有給休暇に1年間の出産休暇、さらに年金制度がある。加えてブルゴーニュ産赤ワインは米オレゴン州のピノ・ノワールと同じくらい美味だ!

欧州の苦境とは

 他方で、いま欧州が苦境に立たされていると指摘しなければ、公平を欠くだろう。昨年の米国の経済成長率は2.5%で、0.4%の欧州連合(EU)の6倍にのぼった。米国にはアップルやグーグル、メタなどハイテク企業の成功例があまたあるが、欧州企業はハイテク企業の時価総額世界トップ10リストに1社も入っていない。企業価値が10億ドルを超える新興企業の「ユニコーン企業」の数は、ギリシャが2社、イタリアやベルギーは3社で、アフリカ最小の国セーシェルと同じ程度だ。

 フランスにはアーモンドクロ…

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