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 みなさんは、自分の血圧がどれくらいか、気にしたことはありますか?

 今月から、血圧について、みなさんと一緒に考えるコラムを始めます。まだまだ大丈夫という人も、実は高血圧の薬を飲んでいるという人も、脳卒中を起こしてしまった……という人も、読むと今よりちょっと健康になる。そんな情報を、日本高血圧学会に所属する、血圧管理のエキスパートの医師たちとお届けします。

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こっそり読みたい血圧の話=イラスト・近藤祐

 今回は、学会理事長で自治医科大学循環器内科の苅尾七臣教授が担当します。「血圧と向き合う理由」について、語ってもらいました。

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気づいたときにはもう遅い!? 救急搬送された人を分析すると

 まずは、びっくりする数字から。「8割が何の手も打っていなかった」。何の数字か、わかりますか。

 私たち自治医科大のチーム(田中亮太・脳卒中センター長)で「脳出血で救急搬送された人」約350人について調べたところ、50歳未満の人は全員が高血圧で、このうち約8割は、何も治療をしていなかったことがわかりました。50代の人は7割、60代は6割が未治療でした。倒れて初めて、高血圧と向き合うというケースです。

 さらに、残りの2~3割の人たちは、薬は飲んでいるけれど血圧が上手にコントロールできていなかった、という人たちでした。悲しい事実だと思いませんか。

 国内では、年間約10万人が、脳出血や脳梗塞(こうそく)によって亡くなっています。心臓の病気で亡くなる人は約23万人。この数字は長年、横ばいです。血圧は、こうした心臓・血管にまつわる病気と関係が深く、上の血圧が20ミリHg(下の血圧なら10ミリHg)上がるごとに、死亡のリスクは2倍ずつ増えていきます。

 でも、裏返すと、こうした死亡のリスクは、血圧がしっかりコントロールできていれば、予防できる可能性が高いのです。

 脳卒中や心筋梗塞などのアクシデントは予防できる。ぜひこのことを、みなさんに知って欲しいと思って今回コラムを始めることにしました。

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日本高血圧学会理事長の苅尾七臣・自治医科大学教授

血圧を左右する「量」と「抵抗」

 ところで、血圧はどうして上がるのか、ご存じですか。

 血圧とは、血管の内側から外側にむかってはたらく圧力のことで、主に「血管に流れる血液の量」と「血管抵抗」によって決まります。血液の量や、血管抵抗が上がると、血圧が上がります。

 血液の量を増やす2大要因は、ストレスと塩分です。ストレスで交感神経がたかぶると血液の量が増えます。また、体内に取り込む塩分(ナトリウム)が増えると、血液中の水分量が増して血液の量が増えます。このナトリウムを体外に排出しているのが腎臓ですが、腎機能が衰えると、その処理がおいつかず、血圧はますます上がっていきます。

 血管抵抗を上げる原因の一つは、加齢です。加齢によって血管の柔軟性が失われていくと、血管の抵抗が上がります。また、血流量が増えると、それにあらがって血管は狭くなろうとするため、ますます血管抵抗が上がる、という悪循環がおこります。

 こうして狭く、硬くなった血管がつまると脳梗塞や心筋梗塞が、細い血管がやぶれると脳出血がおこる、というわけです。

目指せ血圧130、元気なうちから対策を

 私たち日本高血圧学会の治療ガイドラインでは、治療の対象になる高血圧を「診察室ではかる血圧が140/90ミリHg以上」「家庭の血圧計ではかる血圧が135/85ミリHg以上」と定義しています。この数値を超えると、薬による治療の対象になります。

 ただ、これまでの研究から、血圧が130/80ミリHgを超え始めると、脳出血や脳梗塞などが増えることがわかっています。

 そこで、血圧は「130/80ミリHg未満」を目指してほしい、と私たちは考えています。この数字をぜひ、覚えてくださいね。

 血圧は、食事や運動、睡眠など、毎日の生活習慣をととのえることで、よい状態をたもつことが可能です。このコラムでは、日常生活に役立つ情報を届けていく予定です。ご期待ください。

 さて、みなさんの近くに、血圧計はありますか? 次回のコラムまでにぜひ一度、ご自身の血圧をはかってみてください。

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血圧は130未満を目指そう!

次回は4月21日に配信予定です。「血圧、いつはかる?」がテーマです。

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