医療費の患者負担に月ごとの限度を設けた「高額療養費制度」の上限額引き上げについて、日本臨床腫瘍(しゅよう)学会、日本癌(がん)学会、日本癌治療学会のがん関連の3学会は27日、見直しを求める共同声明を出した。そのほかの学会からも「引き上げは患者の負担増や受診控えにつながる」として、凍結や見直しを求める声が相次いでいる。
高額療養費制度の見直しでは、政府は2025年8月から27年8月にかけて、3段階で限度額を引き上げることを想定していた。だが、がん患者らからの不安の声を受け、直近12カ月以内に3回以上限度額に達した場合、4回目から限度額が引き下げられる「多数回該当」については、据え置くと修正していた。
3学会は声明で、最近のがんの治療薬は高額なため、「最初の3回の自己負担額上限が増額されることにより、適切ながん治療を受けることをちゅうちょする患者さんが現れることを懸念する」と指摘。政府案の見直しや、がん患者の経済的負担の軽減に向けてさらに検討するように求めた。
乳癌学会は26日に出した声明で、乳がんはほかのがんに比べて現役世代・子育て世代の患者の割合が多いとし、「医療費の負担が原因で経済的困窮に陥ることは、患者本人だけでなく家族を含む生活全般に深刻な影響を及ぼすことが懸念される」などと指摘。政府に対し、上限額引き上げの凍結とともに、患者や専門家との対話・情報公開を踏まえた透明性の高い政策決定プロセスを踏むように求めた。
このほか、日本胃癌学会や日本緩和医療学会などからも引き上げ見直しを求める声明が出されている。