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 患者団体らの反発を受け、今夏の引き上げを見送った「高額療養費制度」をめぐり、厚生労働省は26日、患者団体などで構成する専門委員会を立ち上げた。患者が負担する月ごとの医療費の上限の引き上げを検討する厚労省は、委員会で意見を聞いて秋までに方向性を決めたい考えだ。

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高額療養費見直しの議論のポイント

 「医療費節減に資する他の代替手段を優先かつ十分に検討すべきだ」。委員会に出席した全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長は引き上げへの慎重な議論を求めた。それでも上限額の引き上げが必要な場合は「支払い能力に対する医療費の負担を考慮し、(家計の中で)過重な負担割合とならないようにすること」とクギを刺した。

 政府は昨年末、高額療養費制度の負担上限額について、2025年夏から3段階に分けて引き上げていく案をまとめた。約10年ぶりに上限額を全面的に上げる見直し案だった。高額な新薬や治療法の広がりなどで、高額療養費は医療費全体の倍のスピードで伸びている。政府が23年に決定した「こども未来戦略」で、社会保障費の歳出を減らし、児童手当の拡充などの財源とすることが決まったことも、引き上げの検討の背景となった。

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医療費に占める高額療養費の割合の推移

 それに対して、患者団体からの不安の声は強く、政府は国会の予算審議の場で野党から激しい批判を受けた。石破茂首相は3月、「検討プロセスに丁寧さを欠いた。患者に不安を与えたままの見直し実施は望ましくない」と述べ、今夏の引き上げを見送る方針を示した。

 見直しの検討過程で厚労省が…

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