鳥取大は、教員人材を養成している地域学部地域学科の「人間形成コース」の名称を、2027年春の入学生から「教育科学コース」に変更する。鳥取県内の教員のなり手不足が深刻化する中、教員養成機関であることを対外的に明確にして受験生の取り込みをめざす。
原田省(たすく)学長が26日、鳥取県庁を訪れ、平井伸治知事にコース名変更を報告した。原田学長は「教育的な側面から地域の諸課題の解決に向けて活躍できる人材を育成することなどの意味を込めた」と説明。平井知事は「実際のカリキュラムなどを県としてもフォローし、協力すべき所はしっかりと協力していく」と応じた。
鳥取大は04年、島根大と県境を越えて学部を再編。島根大教育学部が教員養成に特化し、鳥取大は教育地域科学部を地域学部に転換した上で教員養成機能は残した。しかし、鳥取県内の教員採用数に占める鳥取大の卒業生は減少が続き、鳥取県は鳥取大に対し、教育学部の復活を含む教員養成機能の強化を要請。平井知事は今年4月に原田学長と協議した際、「コース名に教育という言葉を入れてほしい」と求めていた。
鳥取県によると、近年は県内の教員採用数自体が計画を下回る状況が続き、今年4月は約260人の採用計画に対し、実際の採用数は約190人にとどまった。全国的な教員のなり手不足で、他県の教員採用試験に合格して鳥取での採用を辞退する人も多く、県教育委員会の担当者は「教員志望者が県外に流出している」と危機感を募らせる。
こうした状況を踏まえ、鳥取大は教育科学コースに新たな入試枠「地域教員希望枠」も創設する方針。鳥取県や県教委と連携し、卒業後に県内で教員として働くことを条件に県の教員採用試験で優遇したり、奨学金を助成したりする考えだ。コース定員55人のうち地域枠は5人程度を予定する。
原田学長は取材に「コース名は5案から教員の多数決で決まった。知事に受け入れてもらい、非常にうれしく思う」。平井知事は「分かりやすい名称になったが、これからがスタート。『実』のある教育改革につながるよう、県としてもソフト面や財政面も含めて必要な支援に向かっていきたい」と話した。