朝日新聞の1面コラム「折々のことば」筆者でもある哲学者の鷲田清一さん(75)が、12年間務めた「せんだいメディアテーク」の館長を3月末で退く。東日本大震災の被災地で生み出される言葉にじっと耳を傾け、対話の場を開き続けた。23日、聴衆の前で最後に語った。
発災から50日余りが過ぎた2011年5月。地震被害で休館していたメディアテークの再開に合わせ、大阪大総長だった鷲田さんが招かれ、話をした。
「生涯で1番しんどいスピーチだった」。鷲田さんはそう振り返った。つらい思いをしている中、それでも避難所から足を運んでくれた人たちを前に、「頑張りましょう」とも「大丈夫ですか」とも言えない。何を話したかも、よく思い出せないという。
館長就任から考えてきた、二つのこと
ただ、驚いたことがあった…