東京都千代田区立麴町中学校が、ダンス部の部活動をヒップホップから創作ダンス中心に変更し、生徒や保護者が反発した問題が波紋を広げている。朝日新聞がこの問題を6月に報じた直後、学校側が「実態と異なる報道がなされている」などと文書で発表。それを見た保護者の一部が「学校の説明は実態と異なる」と主張し、千代田区議会で学校の対応が問われる事態になっている。
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「保護者の方々から現場の実態と異なるとの意見が出てきている」
6月27日の区議会一般質問。大坂隆洋区議(自民党)が、一連の問題をめぐる学校側の説明と、保護者の主張のくい違いについて区教育委員会の見解を求める場面があった。
この問題は、麴町中の保護者46人が5月下旬、千代田区の教育委員会に抗議文書を出したことで顕在化した。
文書や保護者への取材によると、ダンス部はこれまでヒップホップ専門のコーチの指導のもとで週2回の練習を積み、体育祭と文化祭で発表していたが、学校側の判断でいずれも発表の場がなくなった。
文書によると、発表の場がなく存続が危ぶまれたダンス部について顧問が学校に相談したところ、「運動部として中体連(日本中学校体育連盟)の大会を目指す内容に変更すれば、存続は可能」という助言を受け、「創作ダンスに変更した」と部員、保護者らに説明したという。
麴町中の堀越勉校長は5月末の朝日新聞の取材に「ダンス部は運動部なので公式の中体連の大会を目指すべきだと思い、創作ダンスに変更した。ヒップホップは部活でなくてもいいと思う」などと答えていた。
学校の部活内容の変更に、部員らは「ヒップホップを踊りたい」と涙ながらに訴えたといい、保護者も学校に抗議した。これを受け、学校は3年生が引退する7月の1学期末に発表の場を設け、週1回だけ学校内でのヒップホップの自主練習を認めた。1学期終了後からは創作ダンス中心にし、大会出場を目指すという。
保護者は区教委に対し、一連の学校側の対応は「(部活動は)生徒の自主的、自発的な参加により行われる」と定めた千代田区の「運動部活動ガイドライン」に違反する、などと抗議する文書を出し、7月12日までの回答を求めている。
6月12日に朝日新聞デジタルでこの問題を報じた翌日、麴町中は「本校ダンス部に関する報道について」とする保護者向けの文書をホームページで公表。ダンス部の「現在の活動状況」として、「専門性の高いコーチが着任し週2日の活動」「ヒップホップダンスに特化した練習及び多様なダンスに対応できる基礎基本の練習を実施」などと説明した。
複数の保護者は取材に対し、「学校の説明は実態と異なる」と証言する。
保護者によると、毎週火曜と金曜のダンス部の練習日のうち、ヒップホップの自主練習が許されているのは火曜のみ。「コーチが1年生の部員(1人)に創作ダンスの基礎を教える隣で、2~3年生はヒップホップを自主練習し、終わる直前にコーチに見せ、アドバイスをもらう程度だ」と指摘する。創作ダンスのみの練習となる金曜は3年生の参加が認められず、3年生は近くの児童館などで自主練習していた。学校はその理由を「3年生は大会に出ないから」などと説明したという
千代田区議会では大坂区議が、こうしたくい違いについて質問し、区の教育担当部長は「多様なダンス指導ができるコーチの下で、週2回の練習のうち1回はヒップホップダンス、1回は(創作)ダンスの基礎を練習している」と答弁。
だが、学校側が説明している「ヒップホップに特化した練習」の詳細は語らなかった。
大坂区議は「学校と教育委員会には、生徒に寄り添った対応と解決をお願いしたい」と訴えた。 7月1日から発表会までの間、ヒップホップの練習場所を提供するとの学校の申し出により、現在は自主練習が校内でできるようになったという。
報道後の学校側の説明に対し、朝日新聞は改めて麴町中に取材を申し込んだが、「報道対応はできない」としている。(編集委員・森下香枝)