フィリピンのドゥテルテ前大統領に対する国際刑事裁判所(ICC)の捜査が、新たな局面を迎える。薬物犯罪対策として超法規的殺人を推進した「麻薬戦争」について、ドゥテルテ氏が捜査拒否の姿勢から一転、受け入れる意向を示したためだ。マルコス大統領も14日、ICCへの協力を表明。予備調査開始から6年をへて、逮捕の可能性が出てきた。
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ドゥテルテ氏は2016年の大統領就任後、麻薬撲滅を掲げて強硬な取り締まりを主導。警官による超法規的殺人を事実上容認した。政府の集計で死者は6千人を超え、数万人単位に上るとの人権団体の推計もある。ドゥテルテ氏は人道に対する罪の疑いで捜査対象となっている。
「国と若者のためにやるべきことをやった。私は麻薬と売人を憎む」。ドゥテルテ氏は10月28日と11月13日、下院の公聴会に出席し、正当性を主張した。警官以外にも7人の「殺し屋」を雇い、自らも「6、7人を殺害した」と、直接手を下したことも認めた。
子どもも犠牲に
理由について、麻薬が原因で性犯罪や強盗などの犯罪がはびこっているためだとし、「妥協することなく、違法薬物の問題を解決しようとした。(殺害に関わった)警官は私の指示に従っただけで、全ての法的責任は私が負う」と述べた。
ただ、十分な取り調べや裁判を経ずに多くの人が殺害されたため、死亡者の中には無実の人や、犯罪組織などに利用されただけの人もいたとみられている。また、132人の子どもが犠牲になったことも報告された。
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