奈良県桜井市の全長約204メートルの前方後円墳、桜井茶臼山古墳(3世紀後半)。近年の研究で、103枚以上という破格の数の銅鏡が副葬されていたことが明らかになった。
その中に、「鼉龍(だりゅう)鏡」という鏡が。読むのも書くのも難しいこの名前、どこかで見たことがあるような……。
- 記者たちの古都こぼれ話
一つの頭に二つの体
2年前に奈良市の富雄丸山古墳(4世紀後半)で出土した、過去に類例がない盾形の銅鏡が注目を集めた。その正式名称が「鼉龍文盾形銅鏡」。長さ64センチ、幅31センチの縦長の鏡に、普通の銅鏡を貼り付けたような円形の文様が二つあり、それが鼉龍鏡とそっくりだったのだ。
これらの鏡に浮き彫りになった、長い胴を持つ怪獣が「鼉龍」らしい。いったいどんな竜なのだろう。
古墳時代の銅鏡に詳しく、桜井茶臼山古墳の銅鏡の研究も手がける大手前大学の森下章司教授に聞くと、「実は、鼉龍鏡と呼ばれる鏡に描かれているのは『鼉龍』ではないんです」という。
え、どういうこと?…