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 歌壇俳壇面のコラム「うたをよむ」。短歌は上句と下句からなるのが基本ですが、歌人の魚村晋太郎さんが三つの部分に分かれる「三段切れの歌」を取り上げ、論じます。

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うたをよむ 魚村晋太郎

 35歳。とてもおおきいごま油。わたしはそれを使い切るだろう。

 井口可奈

 歌集『わるく思わないで』から。短歌は上句と下句からなるのが基本。この歌のように三つの部分に分かれる歌は短歌講座などでは避けるように言われることが多かった。しかし最近はよく見かける。俳句では二カ所に切れのある句を三段切れと言って原則としてこれを嫌う。短歌では一般的な用語ではないがここでは三段切れの歌と呼ぶことにする。

 作者は35歳という年齢をごま油のようだと捉えた。脂がのった、という表現に近いが濃い香りや色のイメージも付加されている。「35歳はとてもおおきいごま油」とすれば従来的な歌の造りに近づくがそれではしっくり来ないのだろう。

 新しい靴の人のとなりで歩く…

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