詩人・社会学者の水無田気流さん

 昨年10月の政権発足から342日目となった7日、石破茂首相(自民党総裁)が退陣を決め、党内は新たな総裁選びに向けて動き出した。1年足らずの石破政権をどう振り返ればいいのか、次の総裁に求められることは何か。社会学者で詩人でもある水無田気流(みなしたきりう)・国学院大教授に聞いた。

「#石破やめるな」デモにみえた成熟

 「熟議」という表現を好む石破氏は、スピードが求められる「タイパ」重視の社会において、とても「遅い首相」だった。

 ポピュリストは決断が非常に速いが、石破氏は対話を通じて現実的な落としどころを探ろうとするタイプの政治家。だが、対話と熟議には時間がかかるし、選挙での勝利にはつながりにくい。7月の参院選では野党から「外国人」や「手取りを増やす」が取りざたされたが、これを政権が斟酌(しんしゃく)し、国民の不安を解消するようなリップサービスはなかった。

 明快さやスピード感を好む世論からみれば、まどろっこしく見えただろう。あるいは安定した中間層がある時代だったら、石破氏のスタイルでも長期政権が築けたかもしれない。国民が精神的にも経済的にも困窮し、不安を抱える人も増えたことに対する想像力が少し足りなかった。

 一方で、SNSから「#石破…

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