大阪経済大教授の福本智之さん=相場郁朗撮影

 中国経済が、大きな節目を迎えています。共産党と政府は9月末以降、経済が困難な局面であるとのシグナルを発し、経済対策を続々と打ち出してきました。不動産不況に端を発する深刻な減速を食い止める効果はあるのでしょうか。日本銀行北京事務所長も務めた福本智之・大阪経済大教授に、日本のバブル処理の経験も踏まえつつ聞きました。

 ――10月18日に発表された中国の7~9月期実質GDPは前年同期比で4.6%増となり、4~6月期より減速しました。中国経済の現況をどう見ますか。

 「四半期を追うにつれて成長率は下がっており、中国経済の弱まりを映し出していると受け止めている。特に消費が不調だとされる。6月のネット通販のセールでも弱さが目立ち、そのまま7月、8月と弱まっている。10月の国慶節連休の人出はコロナ前を上回っている一方、よく見ると日本でいう『安・近・短』で身の丈にあった消費になっている。進出している日本の回転ずしやサイゼリヤにはプラスとなっているようだ」

 「消費の弱さの背景にあるのは、不動産の問題と所得の伸びの鈍化だ。不動産の不調は3年以上にわたり、実勢価格では全国平均で3割近く下がっていると思われる。その『逆資産効果』が家計に響いている。さらに、可処分所得の伸びも鈍っている。個別の例では金融機関や地方政府で賃下げや、ひどい場合には払ったボーナスを返してくれという事態も起きている。将来の所得への期待も当然下がり、なるべく貯蓄をしておこうとして消費を弱くしている」

 ――経済の減速の深刻さは、当局も意識しているようです。中国共産党と政府は9月末以降、経済対策とみられる政策を連発しました。

 「この時点での評価は難しいが、まずもっと早く深刻に受け止めて欲しかったという感覚がある。(例年、下半期の経済政策を議論する)7月の共産党政治局会議では『新質生産力』やハイテク製造業でがんばる、これまでに決めたことの実行を早めるといったくらいのことしか言っていなかった」

変わった空気、打ち出した金融緩和、ただ…

 「これが大きく変わったのが…

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