日本の伝統的酒造りが先月、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。この機会に、独立行政法人酒類総合研究所(広島県東広島市)が日本酒のこうじ造りを公開しました。酒造りに非常に重要なこの工程には、微生物を相手に杜氏(とうじ)たちが作り上げてきた繊細な技術が詰まっていました。

菌が増え始めたこうじを「こうじ蓋(ぶた)」という木製の容器に小分けする=広島県東広島市の酒類総合研究所

 日本酒のこうじは、こうじ室(むろ)でおよそ2昼夜かけて造る。

 蒸した米にこうじ菌を生やしたものが、こうじ。こうじ菌が増殖した米粒の中には、こうじ菌が出した酵素がたくさん含まれている。

 伝統的酒造りでは、こうじ菌と酵母という二つの微生物を使う。アルコールは酵母がブドウ糖を分解して生まれるが、酒の原料となる米にはブドウ糖は含まれていない。酵素の力で米のでんぷんを糖化しブドウ糖を生み出すのがこうじの役割で、酒造りに不可欠なものだ。

日本酒は黄、焼酎や泡盛は黒・白

 1日目午前11時。こうじ室に入ると、ムッと熱い空気に包まれた。菌が繁殖しやすいよう、室温が約34度に設定されている。職員が蒸した米を薄く広げて温度を冷まし、ふるいに入れたこうじ菌(種こうじ)を振りかけていく。「米一粒ずつにまんべんなく行きわたるよう、いかに均一に振るかが重要です」と研究所業務統括部門の阿久津武広・副部門長が説明する。

蒸した米にこうじ菌の胞子をふりかける作業=広島県東広島市の酒類総合研究所

 手の動きに合わせて、緑の粉状をしたこうじ菌の胞子が、サッと米の上に散らばる。続けて、米にこうじ菌がしっかりと付着するよう、手で混ぜ合わせてもみこみ、山積みにして全体を布で覆い、菌の発芽を促す。こうじ菌には黄こうじ、白こうじ、黒こうじがあり、日本酒は主に黄こうじ菌を使う。

 酵母がアルコールとともに香…

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