2016年に2度の震度7を記録した熊本地震からまもなく9年。各地の復旧が進む一方、なお道半ばのものもある。古墳もその一つで、「地震からの古墳復旧は前例がない」(熊本市文化財課)といい、修復完了までに10年を超えることが確実なものも多いという。
日本考古学協会の報告書によると、熊本県内では48基が被害を受けた。
熊本県和水(なごみ)町の国史跡「江田船山古墳」。5世紀後半の前方後円墳(全長62メートル)で、日本最古級の文字が刻まれた大刀などが出土し、国宝になった。当時の地方豪族の権力を示すとされる。
熊本地震直後の目視調査では被害が分からなかったが、19年の震度6弱と5弱の地震で、石棺の亀裂や石材の崩落が見つかった。史跡保存に関する町の審議会は「熊本地震で目に見えないストレスを受けていた」とみる。
25年度から復旧工事に入るが、修復より「これ以上被害を大きくしない」が基本方針だ。石棺内にステンレス製の補強フレームを入れるほか、石棺の外にしっくいやモルタルなどの充塡(じゅうてん)剤を詰めて倒壊や亀裂の拡大を防ぐという。
同町の国史跡「塚坊主古墳」(6世紀、全長43メートル)も熊本地震直後の目視検査では被害が分からなかったが、18年の西日本豪雨で、古墳を覆う保護施設から雨水が漏れていることや石材の落下が確認された。水漏れ対策などの工事が24年度に終わり、今年3月から見学が再開されている。
熊本市南区の国史跡「塚原古…