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古民家を移築した戸田工務店の本社事務所を案内する戸田幸志マネジャー=2024年12月13日、愛知県新城市、溝脇正撮影
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 解体され灰になるところだった「古民家」が海を渡り、新たな建物として生まれ変わっている。海外への移築を事業として進めているのは、自然豊かな愛知・奥三河で木造の家づくりをしている地場の工務店。日本の伝統文化と建築技術を守り残したいという思いと、異国の建築家たちの夢がつながった。

古材にとどまらない、古民家の価値

 愛知県新城市の戸田工務店。昨年12月中旬、山あいにある同社の作業場に、解体した古民家の古材が並んでいた。目を引くのは、長さ12メートルのマツの棟木。屋根の棟の位置に取り付けられる部材だ。ほかにもケヤキやヒノキの柱、マツの梁(はり)などが、番号をふられて保管されている。

 空き家になった築150年の古民家だという。「この棟木は、私たちも解体作業の中で見つけて驚いたもの。これほど大きく立派な材木は、国内ではそう見つからない」。同社の古民家移築事業を担う戸田幸志マネジャー(45)が説明する。これら部材は近くコンテナにつめられて船で運ばれ、米国・ボストンに移築される予定という。

 価値は古材だけではないという。「部材の接合部に釘や金物を使わずに木と木をつなぐ伝統工法は、世界に誇れる大工の技術」

 移築は、古材を一本一本丁寧に外し、作業場に運んで土ぼこりを払い、洗浄や補修などをする。古材は重みから解放されるとねじれたり曲がったりするので、再び組み直すことができるように接合部を調整しなければならない。海外への移築となると一層手間がかかるが、「古民家を世界に移築することで、日本文化やブランドの構築とともに、空き家問題の解決につなげたい」と戸田さんの言葉に力がこもる。

 これまでに4棟が米国やジャマイカなどに移築され、今年も複数の古民家がその時期を待っているという。

何から手をつけたらいいか…

 偶然の出会いが海外への古民…

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