(12日、第106回全国高校野球選手権山形大会1回戦、東桜学館8―13山形工)

 開幕試合の初球、投球が大きくはずれた。東桜学館の捕手、斎藤己鳳(こだか)主将(3年)は自らの肩をグルグルと後ろに回し、「リラックスして」と投手に伝えた。

 適時三塁打や本塁打などを浴び、初回は一挙5失点。それでも、笑顔でベンチに駆け戻った。

 「開幕戦なので、まずは楽しんだもの勝ちだと思って」。ピンチの場面で内野手がマウンドに集まると、仲間も「笑えよ」と声を掛けてくるなど心の余裕があった。

 最大11点差をつけられたが、12安打と打線がつながり5点差まで迫った。選手10人のうち、3年生は4人。1年生が半分の5人を占める。

 「中盤の追い上げは、1年生がつないでくれたから」と後輩たちの活躍をたのもしく感じた。

 4番を打つ自身も、公式戦初の4安打だ。

 チームの全員が打撃用の手袋をする中、1人だけ素手で打席に入り、鋭い当たりを連発した。

 「実は、普段使っている手袋を忘れてきてしまったんです。朝、球場に来てから気づきました」

 後悔は一切ない。「いい試合ができました」とやりきった表情を見せた。(坂田達郎)

共有
Exit mobile version