第97回選抜高校野球大会に初出場した滋賀短大付では、部員への人間教育の一環として奨励していることがある。12月末から年明けの冬休みを利用して、3万円の部費を生徒自らが出すことだ。野球部員としてお金の大切さを分かってもらうことなどが狙いだという。
保木淳監督は「アルバイトでもいい、お年玉でもいい、家の手伝いでもいい、自分から『お金を工面する』ことで、どれだけ自分が支えられているか、ありがたみを分かってほしい」と、「3万円」の意図を説明する。
この冬休み、関東正悟選手(2年)は人生で初めてというアルバイトを経験した。大津市内にある近江牛専門店「近江かど萬(まん)」のレストランでバイトをした。ほかに3人の部員が一緒に働いた。かど萬に滋賀短大付の卒業生が勤めているという縁があってのことだ。
主に洗い物を担当し、慣れてくると店内でお客さんの案内もした。関東選手は「覚えることが多くて、人間関係も作っていかないといけないので、働くことは大変だなと思いました。お父さん、お母さんはともに働いているので、大変さを理解することができました」と話す。
かど萬でもらった7万円のバイト代のうち、3万円を部費に。1万円は「自分がいつもお世話になっているおばあちゃんや親戚に、お箸かコップなんかをプレゼントできたらいいなと思っています」。残り3万円は貯金だ。関東選手は店で食べさせてもらう「まかない飯」にも感動した。「あんな近江牛、食べたことなかったです」
かど萬の高橋未琴さん(24)は滋賀短大付の出身で、自分の弟のような関東選手たちの指導役をしてきた。「野球部だからちゃんと声も出てましたし、あいさつもしっかりしてました。お金をもらっているスタッフの意識をしっかり持ってねということは伝えました」
同社の高橋昭典社長(49)は「毎日楽しそうに働いている関東くんの笑顔はよかった。一生懸命頑張ってくれました。選抜に選ばれた時は自分の子どものようにうれしかったです」。野球部のアルバイトは、「また受け入れたい」とのことだ。