くだもの王国・山形の象徴ともいえる、サクランボ。長年、果樹の品種改良に取り組んできた「サクランボ博士」石黒亮・東北農林専門職大学准教授(61)に、山形がこれほどの産地になった理由や、甘い大粒の実の開発秘話を聞いた。
――150年前に各地で西洋果樹の栽培が始まったものの、多くの県でサクランボは実がならなかったそうですね。山形とサクランボはなぜ相性が良かったのでしょう。
何より、気候風土が栽培に最適でした。内陸の村山・置賜地域には、母なる川・最上川とその支流がつくった扇状地が広がっています。表土の浅い扇状地はその下に石が堆積(たいせき)し、水はけにすぐれています。気候は昼夜の寒暖差が大きく、梅雨時期も比較的雨が少ない。栽培に適した地理的・気象的条件がそろっていたのです。
ただ、それだけではありません。
もう一つは、人です。山形に…