足のない幽霊を初めて描いたとされ、現在多くの人が思い浮かべる幽霊のイメージを定着させた江戸中期の画家・円山応挙(1733~95)の幽霊画が、青森県弘前市の久渡寺で年に1回1時間だけ公開される。この限定公開に合わせ、弘前市在住で漫画「ふらいんぐうぃっち」で知られる漫画家・石塚千尋さんが幽霊画を描き、久渡寺に奉納した。
応挙の幽霊画「絹本墨画淡彩返魂香之図(けんぽんぼくがたんさいはんごんこうのず)」(縦99・3センチ、横27センチ)は、弘前藩の家老を務めた森岡主膳元徳(もとのり)が1784年に寺に奉納。正妻や妾(めかけ)を亡くした元徳が、女性たちをしのぶため、応挙に描かせた。悲しげではあるものの、その顔は美しく優しげでもある。津軽には影響を受けたとみられる作品が多数存在する。
石塚さんが新たに描いた幽霊画「令和返魂香之図(はんごんこうのず)」(縦110センチ、横40センチ)は、お盆の里帰りから先祖が天に戻る「萬灯会(まんとうえ)」をモチーフに、振り返りつつほほ笑んでいるようにみえる若い女性を描く。青い装束姿で、応挙作品のように下半身は透けている。背景には灯籠(とうろう)と約200段とされる石段も描き込まれている。
石塚さんは「住職から幽霊画が描かれた経緯を聞き、その女性の思いを想像して描いた」と言い、特に目元に時間をかけたという。
その目元は、やはり悲しくも優しげだ。「幽霊画は怖いものというイメージがあったが、この人にもう一度会いたい、という人を思う気持ちを表現した」と話す。
応挙の幽霊画の公開は13日午前11時半の法要に続いて正午から1時間。石塚さんの幽霊画は13日(正午~午後4時)に続いて、14日と15日にも公開される。
住職の願いと、石塚さんの「恩返し」
久渡寺に伝わる幽霊画は、2…