神奈川県平塚市の保育園で2017年、女児(当時1)を暴行して死亡させたとして傷害致死罪に問われた元保育士の嘉悦彩子被告(49)=同県伊勢原市=の裁判員裁判で、横浜地裁は16日、無罪(求刑懲役10年)を言い渡した。奥山豪裁判長は「女児の死因を確定できず、有罪の根拠がない」と述べた。
被告は17年4月、女児の後頭部を複数回たたきつける暴行を加え、頭蓋骨(ずがいこつ)骨折などに伴う外傷性くも膜下出血で死亡させたとして起訴された。21年の逮捕直後に容疑を否認し、公判でも一貫して無罪を主張した。
目撃証言や凶器などの物的証拠はなく、検察側はくも膜下出血は第三者による暴行で生じ、「女児がけがをした時間に見守りをしていたのは被告だけで、暴行を加えられるのは被告しかいない」と主張。弁護側は女児は超低出生体重児で、「ウイルス感染による突然死の可能性もある」などと反論した。
判決は、後頭部に大きな力がかかったとする検察側証人の医師2人の証言は、他の専門家の証言などに照らし、「医学的根拠を欠く」と指摘。死因を確定できないうえ、女児の傷害が生じた時期も被告だけが保育室にいた時間帯とは確定できないとし、無罪とした。
弁護団は判決後、「事実に基づき適正に証拠を評価した結果の無罪判決で、極めて妥当」と話した。横浜地検の塩沢健一次席検事は「判決内容を精査し適切に対応したい」とコメントした。