東畑開人さんの「社会季評」
選挙の一年だった。都知事選、各党の代表選、衆院選、米大統領選など、私たちを熱くさせる選挙がたくさんあった。そういう一年にも、私はもちろんカウンセリングをして暮らしていたわけだが、そこで得た政治的観察をひとつ、一年の終わりに記しておきたい。
普段、カウンセリングで政治の話をすることはほとんどない。そこで語られているのは、クライエント(相談者)の半径5メートルの小さな物語だ。つまり、家族や恋人、友人、職場の同僚などとの個人的な関係と、それらをめぐる傷つきと孤独について、私たちは日々話し合っている。しかし、選挙が終わった後の一週間(選挙期間中ではないのがミソだ)は違った。クライエントたちは誰に投票したのかを口々に語っていた。
投票先は様々。与党に投票した人もいれば、野党に投票した人もいた。前職に投票した人も、新人に投票した人もいた。都知事選ならば、小池百合子氏に、石丸伸二氏に、蓮舫氏に、あるいは他の候補者たちに、それぞれの一票を託していた。カウンセリングには様々な政治的立場の人がやってくる。
私が驚いたのは、彼らが候補者たちの心の物語を親密な雰囲気で語ったことだ。たとえば、小池百合子氏の悲しみについて、石丸伸二氏の受難について、蓮舫氏の孤独について。もちろん、報道され、公開されている情報からの想像でしかないのだが、それでも彼らは親身な気持ちになっていて、候補者たちに個人的な共感を向けていた。「世間ではいろいろ言われている。でも、私にはわかるところもある」
もちろん、そこにはクライエ…